
【昔ばなしが伝える土地の魅力-1】広島・宇品に伝わる「狗賓さん」とは?
あなたが眺めているその島の形に、実は神様たちの「人間くさい」ドラマが隠されているとしたら——。 瀬戸内海の中心、大崎上島。橋のかかっていないこの島には、美しい景色と共に、少しクスッとしてしまうような言い伝えが残されています。いつもの島旅が、愛おしく、味わい深くなる物語の扉を、そっと開いてみませんか。「広島の昔ばなし」に光を当てるシリーズ第二弾です。
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「ただ美しいだけではない景色」が、ある日突然、物語の入り口に見えたら。私たちの旅は、もっと豊かで記憶に残るものになるのではないでしょうか。 こんにちは。「土地」と「住まい方」から、これからの広島らしい暮らしを考えるメディア「Regrid」です。
私たちは、広島という土地に刻まれた「記憶」を発掘することで、現代の暮らしを新しい視点で見つめ直すきっかけを探しています。 今回取り上げるのは、竹原市の沖合に浮かぶ離島、大崎上島(おおさきかみじま)。
この島のシンボル「神峯山(かんのみねやま)」と、あの世界遺産・宮島にまつわる、ユニークな伝承をご存知ですか? この記事を読めば、フェリーから望む島の稜線が、今までよりもずっと親しみ深く感じられるはず。まずは、物語の舞台となる大崎上島へ、少しだけ時間を遡ってみましょう。
大崎上島ー橋のない、船で渡る癒やしの島
さて、今回の物語の舞台となる「大崎上島」は、広島県の島々の中でも少し特別な存在です。
本土と橋で繋がっていないため、ここを訪れる手段はフェリーなどの船だけ。
橋がないからこそ守られてきた、古き良き瀬戸内の原風景が今も色濃く残っています。 造船の島として栄え、木造の古い町並みが残る「木江(きのえ)」地区や、温暖な気候を生かしたレモンやミカンの段々畑。どこか懐かしく、ゆったりとした「島時間」が流れるこの場所は、訪れる人の心を優しく解きほぐしてくれます。
そんなのどかな島の中央にそびえるのが、標高453メートルの最高峰「神峯山」。今回ご紹介する「宮島さんと神峯山」は、この美しい山と、神様たちの人間味あふれる物語です。
「宮島さんと神峯山」
むかしむかし、山や島にも私たちと同じように心があったころのお話です。
大崎上島の「神峯山」と、安芸の宮島にある「弥山(みせん)」は、どちらも瀬戸内海を見下ろす高い山として知られていました。 ある日、二つの山の神様が「どっちが高いか背比べをしよう」と言い出しました。
「わしの方が高いに決まっとる」 「いいや、私の方が高いわよ」 互いに譲らず、実際に背を測ってみることに。すると、なんと神峯山の方が、ほんの少しだけ背が高かったのです。 これに腹を立てたのが、宮島の女神様です。「負けるなんて悔しい!」と、持っていた木槌で、神峯山の頭を「えいっ!」と思い切り叩いてしまいました。

叩かれた神峯山は「痛い、痛い」と泣き出し、その拍子に頭が平らになって、今の高さになってしまったといいます。
神様同士の喧嘩で山の形が変わってしまったという、なんとも人間臭く、ユーモラスな物語。神峯山の頂上が今でも少し平らなのは、この時の「たんこぶ」の名残なのかもしれません。

現代に残る、狗賓さんの気配
神様も嫉妬した? 頂からの絶景 神峯山の山頂にある展望台。
そこからは、瀬戸内海の大小115もの島々を見渡すことができます。その眺めは「多島美(たとうび)」の極みとも言われ、箱庭のような美しいパノラマが広がっています。
もし物語が本当なら、宮島の女神様が嫉妬したのは、高さだけではなく、この山頂から見えるあまりに美しい景色のことだったのかもしれません。 フェリーのデッキから、平らな頭の神峯山を探してみてください。
叩かれて低くなってもなお、穏やかに島を見守り続けるその姿に、きっと心が和むはずです。
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